Fig-1に1年確率波の堤前波高と付着生物種類数および付着生物の湿重量との関係を示す。付着動物と波高との関係では、付着動物の種数は堤前波高が1〜3mで多く、湿重量では堤前波高が0.5〜1.0mの範囲で大きくなっている。波高が大きいことは通常の海水流動が大きいことが想定されるが、付着動物の種数は海水流動が大きい場所で多い、海水流動が小さい内湾的な環境では、環境悪化に耐性のある種(例えば、ムラサキイガイ等)が優占し、量としては多いが、種数が少なくなる。
一方、海藻類と波高との関係では、堤前波高が2〜3mで種数が多く、湿重量は2〜4mで大きくなっている。波高が1m以下の小さい場所では、海藻類の種数・量とも少ない。海藻類は葉面から海水中の栄養塩を吸収するので、ある程度の海水流動が必要なためと考えられる。
2-2.構造形式と付着生物の関係
Fig-2に付着生物の平均出現量と構造物の形式ごとに、付着生物の着生面の面する方位との関係を示す。海藻の出現量は、直立堤よりも消波ブロック堤のような傾斜堤で多くなる。また、直立堤では、x方向側に面すると、日中でも陰になるため海藻類の出現量は小さい。傾斜堤ではN方向に面していても、光が当たるので出現量はそれほど小さくない。一方、動物の出現量を見ると、傾斜堤よりも直立堤の方で多い害直立堤では、フジツボやカキ、イガイ類のように殻を持つ動物が付着する場合が多く、湿重量も大きくなる。
3. 生物との共生技術
以上の検討から、堤前波高が2〜3mでは海藻類の出現が多く、動物も含めて種数も多く多様性が高い。このような波高の場所では消波ブロックが使用されることが多く、傾斜構造となるので、海藻類が優占しやすい。
消波ブロックに藻場が形成された事例も多いが、既存の消波ブロックは防災目的の構造物であり、多少の工夫の余地もある。以下に、消波ブロック等に藻場が形成されれば、生物相が豊かになるという視点で、消波工等への藻場の形成方法を示す。
3-1. 付着基質の組度による海藻の入植促進
消波ブロックの表面に凹凸をつけて、藻類の着生を観察した研究4)5)6)によると、コンブ科の海藻類(アラメ、カジメ、コンブ類)では、少なくともcmオーダーの凹凸が着生に効果があるとしている。これは、凹凸周辺に渦流が形成され、海藻胞子の着底率があがり5)、粒度が海藻の固着力を大きくし、さらに砂のかぶりりによる影響を減らす6)からと指摘されている。ただし、ホンダワラ類では凹凸の効果は明瞭ではない4)。したがって、防波堤等の消波ブロックにコンブ科の海藻の入植が予想される場合には、cm才一ダーの凹凸を表面に付ける工夫が有効であろう。
Table-1 Contents of investigations and wave conditions by sites
港名 |
構造物の形成 |
堤防波高(m) |
周期(sec) |
瀬棚港 |
直立ケーソン防波堤 消波ブロック被覆混成堤 |
0.4〜5.3 |
10.0 |
新潟西海岸 |
離岸堤、突堤、潜堤 |
1.4〜4.7 |
10.1 |
柏崎港 |
直立ケーソン防波堤 |
1.4〜3.4 |
11.2 |
七尾港 |
透過壁ブロック堤 |
0.3〜038 |
8.6 |
御前崎港 |
直立ケーソン防波堤 消波ブロック被覆混成堤 |
0.8〜4.0 |
13.9 |
三河港 |
直立ケーソン防波堤 |
0.6〜0.7 |
5.0 |
関西国際空港 |
傾斜護岸、直立消波堤 鋼製セル護岸 |
0.5〜2.4 |
11.4 |
安下庄港 |
消波ブロック護岸堤 |
0.3〜0.8 |
4.9 |
日良居港 |
消波ブロック離岸堤 |
0.2〜0.6 |
2.3 |
Fig-1 Species number and standing crop of attached organisms as a
function of wave height in front of port structures
Fig-2 Correlation of mean standing crop of attached organisms and
structure type
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